プロジェクトエピソード PROJECT EPISODE

「地域の発展に貢献できる企業でありたい」

ナルサワコンサルタントの根源にある、その信念を貫いた
「プロジェクト」を振り返ってみる。

PROJECT EPISODE 「阿賀野バイパス
水路等詳細設計」
PROJECT EPISODE

「阿賀野バイパス」とは

国道49号(福島県いわき市~新潟市)は太平洋側と日本海側を結ぶ主要幹線道路であるとともに、阿賀野市、阿賀町と新潟市との交流を支える道路として重要な役割を果たしている。

しかし、阿賀野市保田から同市中央町1丁目間は19,100台/日もの交通量があり、大型車が17.6%を占めている状況にある。また、現道は阿賀野市の市街地(旧安田町、旧水原町)を通過していることに加え、幅員が狭いことから、交通混雑や交通事故等が発生しており、自動車交通による交通騒音等の生活環境に与える影響が問題視されている。

阿賀野バイパスは、これらの問題を解消し、安全かつ円滑に交通を処理することで交通渋滞の緩和及び道路交通の安全・円滑化を目的とした、阿賀野市寺社から同市下黒瀬に至る延長約8.1kmのバイパス整備事業である。本事業の完成により「交通渋滞の緩和及び交通事故の低減」「災害に強い広域ネットワークの強化」「地域産業・観光の活性化」等の整備効果が期待されている。

工事が進む阿賀野バイパス
(新潟市方向から阿賀町方向を望む)

「一般土木」「農業土木」
知識・経験が求められて

阿賀野バイパスは阿賀野市の市街地(旧安田町、旧水原町)と阿賀野川に挟まれた農地を通過する計画であるため、設計においては道路、橋梁等の「一般土木分野」に関する知識・経験はもちろん、各所で「用水路や取水設備等の農業用施設との調整」すなわち「農業土木に関する実績・技術力」が求められる業務であった。当社の農業土木に関する実績・技術力は県内でもトップクラスであり、その技術力をいかんなく発揮することが本業務に求められた。

本業務で当社が受注した内容は、阿賀野市福田地内及び同市百津地内の国営福島潟西部幹線用水路の暗渠化及び付帯する構造物(水位調整ゲート、分水工等)の詳細設計並びにバイパスの施工に必要な施設(県道仮回し道路)の詳細設計であった。

数々の課題は“チーム”で解決

本業務は、管理技術者に赤堀(現 取締役技術本部長)、担当技術者に樺澤(現 取締役総務部長)、牛木(現 高田支店技術部)がチームとなって実施された。また、本業務には次のような課題、問題点があったため、解決方法をチームで随時検討しながら業務を進めていった。

【課題、問題点と解決方法】

01 関係機関との協議

設計にあたって、関係機関(施設所有者、施設管理者、用水管理者、隣接道路管理者)の協議をスムーズに進めることが1番の課題であった。 本業務では協議対象関係者が多く、そのどれもが重要であるため、設計段階で構造諸元、機能補償、条件、施工計画、維持管理において了解を得ないと工事の段階、出来上がった後で大きな問題となる。そのため、綿密に計画を立て、正確に、丁寧に、分かりやすい説明資料を用いて説明することに苦心した。

02 県道横断部の仮設計画(仮回し水路、県道迂回路)

県道横断部の施工は、工事期間の交通を一時的に迂回させることとなるため、事故防止や安全性を確保することに加え、幹線用水路は冬期間であっても通水しているため、仮回し水路の安全性、工事に伴う周辺環境や関係者への影響(不利益)をできるだけ最小化すること等、色々な問題、課題があった。そのため、問題、課題をひとつひとつ明確化し、図面に書き出し、工事期間の短縮、安全な道路線形や借地範囲の最小化などを検討し、個々の問題と合わせて全体としての最適化を図った。

03 水位調整ゲート(チェックゲート)の移設に伴う構造形式、水利機能の補償

幹線用水路における水位調整ゲートは、用水路における重要な機能である利水機能を担う。本事業により移設することになったが、ただ単純に位置を変えるだけでなく、利水機能確保し、保守・維持管理、構造安全性も併せて確保する設計とした。
なお、検討段階では自動水位調整ゲートも提案したが、「地区の用水系統全体での管理性から、既存と同形式が望ましい」とする施設管理者の要望により、採用には至らなかった。

PERSON

管理技術者 取締役技術本部長赤堀 悦朗

管理技術者として担った役割

管理技術者には、“技術士等の有資格者であると共に技術と経験に裏打ちされていること”と“業務成果に対する全責任を果たすこと”が求められます。
業務に関わる技術全般の把握はもちろん、担当技術者に対する適切な指示や工程管理に加え、発注者への説明、調整事項の提案など、全体的な管理・監督の役割を担います。

今回の業務は、国土交通省が管理する国道の改良に伴い、農林水産省が管理する国営幹線用水路や新潟県が管理する道路の仮回し、さらに土地改良区等が管理し地域住民が使用する用水の分水工(チェックゲート)などの設計が加わり、関係機関との調整が多かった点に特徴があります。

農業土木(水利施設)、一般土木(道路、橋梁、構造物)、軟弱地盤基礎処理の検討など、幅広い技術力が求められたことに加え、工事期間が農閑期に限られた中で、最適な施工計画案も提案した業務でした。

当時を振り返って

地域密着企業としての特徴を生かし、関係機関との調整や地元との合意形成を図るなど、総合技術力をいかんなく発揮した業務でした。阿賀野バイパスは、完成すれば物資輸送や生活道路として安全に多くの人々に利用される地域の重要な幹線道路となります。現在、バイパス工事は多くの河川、県市町村道、農業用排水路等の横断や軟弱地盤対策に時間を要していますが、全線供用開始に向け着実に進んでいます。出来上がった道路や安定した幹線用水路の取水施設を見るとき、きっと地域の社会基盤整備に貢献出来たことを誇らしく思うことでしょう。

PERSON

担当技術者 取締役総務部長樺澤 一夫

当時を振り返って

設計対象そのもの以上に、業務の半分は関係機関との協議に労を要し、そこをクリアすることに全力を注いだと記憶しています。阿賀野バイパスの道路インフラ機能及び完成イメージと地域農業の重要施設である福島潟西部幹線用水路の機能補償として問題点がないか、色々な角度から検討し、概ね最適な設計になったと考えています。しかし設計から年月が経過し、令和2年度ようやく施工の段階にあり、時間の経過に伴う社会情勢やニーズの変化、新技術の適用など、もっと検討の余地があるのではとも考えています。

今回の設計対象である幹線用水路の機能補償は、単に構造上の代替施設を設計するものではなく、農業水利施設として機能の最上位にある水利用機能(農地に水を供給する:配水の弾力性、保守管理性、環境性)があり、その下に基礎的機能として水理機能、構造機能(力学安全性、耐久性、信頼性)ということを再認識した業務でありました。

若手技術者活躍

当時、チーム最年少であった牛木は“函渠工の沈下抑制工法”と“仮回し道路詳細設計”を担当していた。“函渠工の沈下抑制工法”ではコストや工期を比較検討した結果、置換工法により沈下を許容させる対策を行った。また、“仮回し道路詳細設計”では、コントロールポイントを整理し、何度も線形のトライアルを図った。

担当技術者 高田支店技術部

牛木 岳志

当時を振り返って

私が担当したのは、函渠工の沈下抑制工法と仮回し道路詳細設計でした。函渠工の沈下抑制工法では、当初、「沈下量ゼロ」の制限を可能とする「杭基礎工法」を考えましたが、コスト及び工期において問題があったため、更に他の工法との比較検討を行いました。その結果、詳細計算で若干の沈下(9mm)を許容し、沈下した際にも水密性を確保するために下水道汚水函渠や共同溝で用いられる「プレキャストボックスのPC 鋼棒による函軸方向一体化構造」とする「置換工法」を改善策として提案し、施設管理者の了解を得ました。

仮回し道路設計では、様々な制約条件を踏まえ、現道と同等の道路基準を満たすとともに、限られた範囲での路線計画が求められたため、何度も線形のトライアルを行い、最適化を図ったことを覚えています。業務は検討項目及び関係機関協議が多く、次回打合せまでに課題の対策や資料を作成するなど、労力は非常にかかりましたが、本業務で学んだ多くの知識、業務の流れ、説明方法などは、今のキャリアに活かされています。

設計完了 ~その後~

現在、阿賀野バイパスは令和4年の開通に向け着実に整備が進んでいる。
阿賀野バイパスの前身である安田バイパスが事業化されてから既に40余年。阿賀野市の地域経済活性化の支援、交通渋滞の緩和及び交通事故の低減、そして災害に強い広域ネットワークの強化など、阿賀野バイパスにはこれから大きな役割を果たしていくことが期待されている。そして、完成した施設を見るとき、きっと地域の社会基盤整備に貢献出来たことを我々は誇らしく思うであろう。

「地域の発展に貢献できる企業でありたい」創業時の思いは今も脈々と受け継がれている。継続的な技術力の向上に努め、求められる時代のニーズに的確に対応することは、創業時の意志を継ぐ者に課された使命である。当社の社訓「信用を重んじ、誠実を旨として、技術の研鑽に務める」を守り、我々は新たなプロジェクトに取り組んでいく。これからも「持続可能な新潟の未来」を実現するために。

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